4-1 電子回路と電気の基本


右の図は、砲弾型LEDを光らせるためのシンプルな回路の概念図です。

電子回路を成立させるために最低限必要なのが、

  1. 電源
  2. 導線
  3. 電子部品(素子)

の3つです。まずはこれらについて解説します。
  
  

①電源
 回路に電気を供給するものです。コンセント、乾電池、モバイルバッテリーなどがあります。
 図では左側の乾電池っぽい絵で電源を示しています。

②導線
 ①電源と③電子部品(素子)を繋ぎ、電気の通り道となる線です。図中では青い線の部分になります。

③電子部品(素子)
 電子編の内容のおさらいです!電源と導線だけで構成された、なんの部品も繋いでいない回路は「短絡(ショート)」した状態であり大変危険です(絶対にやってはいけません!)
 電子回路には適切な電子部品(素子)を、適切に繋ぐ必要があります。
 (「素子」とは、“電気の供給を受けて様々な動作をするもの”を指します)
 電源や回路の仕様に合わせたものを正しくつながないと、電子部品は動作しません。
 図中右上では、LEDの球と抵抗がひとつずつ繋がれています。
 LEDはほぼ導線と同じで、単体で回路に繋げると何も繋いでいない回路(=短絡する)と同じ状態になってしまうため、それを防ぐために抵抗を入れています。
 (抵抗は物により威力が千差万別です。抵抗をどう選ぶべきかは後述します)
  



電気は電源のプラス側からマイナス側に向かって流れます。逆向きはありません。
上の図では、オレンジの矢印の方向に向かって電気が流れています。



電子回路は必ずループ状になっている必要があります。
上図では、黄色でうっすら示した部分がループになっています。



しかしこの図では、LEDのすぐ下の部分の導線が切れています。
そのため電気は流れずLEDは点灯しません。
  
  

「電圧」は、電源が送り出す電気の力を表す数値です。
電圧の単位は「ボルト(V)」で、数字が大きければ大きいほど電気を流す能力が高くなります。
例えば、我々の身近にある電源の電圧は、下記のようになっています。

  • 乾電池(単3電池や単4電池)…1本1.5V
  • 乾電池(四角い箱状の形のもの)…1本9V
  • 充電池(enelo○pなど)…1本1.2Vぐらい
  • モバイルバッテリー…一般的には5V
  • 日本の普通乗用車のシガーソケット…12V
  • 日本の一般家庭用コンセント…100V (電気工事士の資格なしで触ってはいけません)

ちなみにArduinoの電源ソケットからは、5Vもしくは3.3Vの電圧で電気を出力することができます。
Arduinoに繋げて動かす電子部品も、大半は5V駆動か3.3V駆動のどちらかのものが多いです。
  
電子回路を作るときに覚えておくべき電圧の特性は以下の通りです。
理科の時間に見たような概念図を2つ出して解説します。

直列回路と電圧


この図は、いわゆる「直列」回路です。「直列」は、電源に対し複数の素子を順番に、次々と繋いでいく繋ぎ方です。

直列接続の場合、直列に繋がれたすべての素子にかかる電圧を足すと、電源の電圧と同じになります。
例えば上図の電源の電圧が5Vの場合、それぞれの電球にかかっている電圧を足すと、5Vになります。
もし上の電球に3Vの電圧がかかっていれば、下の電球には2Vの電圧がかかっていると導けます。

並列回路と電圧


今度は「並列」回路です。「並列」は、電源に対し導線を分岐させて素子を繋いでいく繋ぎ方です。

並列接続の場合、それぞれの素子にかかる電圧は、すべて電源の電圧と同じになります。
例えば右図の電源が5Vの場合、すべての電球には電源と同じ5Vの電圧がかかっています。
  
  

「電流」は、電源から流れる電気の素(=電荷)がどの程度流れているかを示す数値です。
電流の単位は「アンペア(A)」です。また1アンペア(1A)の1,000分の一の単位は「mA(ミリアンペア)」と呼ばれます。
換算できるように、下記の通り覚えておくと便利です。

1A = 1,000mA

電子工作で使う部品は電力消費が少ないものが多く、mA単位の定格のものが多いです。
一方Aはモバイルバッテリーの最大出力や電線・コネクタ等の定格でよく見る単位です。
ただし電子部品でも、例えばLEDテープをなが~~~く何十球も連なったまま使う場合や、とてもパワフルなモータをたくさん使う場合などは、A単位の電流を必要とする場合があります。
  
電流にも電圧と同じように回路上での特性があります。

直列回路と電流


右の図はまたしても「直列」回路です。

直列接続の場合、その回路のどの部分を取っても流れる電流は同じ数値になります。
例えば右図の導線上①の地点に流れる電流が10mAであるとします。
その場合、電球②の部分でも、電球③の部分でも、その先の導線④の部分でも、どこを測っても流れている電流は常に10mAです。

並列回路と電流


今度は「並列」回路です。

並列接続の場合、導線が分岐した後のそれぞれの素子に流れる電流の量の合計が、分岐前の電流量と等しくなります。
右図では、分岐後左側の電球に20mA、右側の電球に10mAが流れています。
その場合、分岐前の導線に流れている電流は20mA + 10mA で 30mAとわかります。
  
  

「抵抗」は、「電気抵抗」の略で、電流の流れにくさを表す数値です。
抵抗の単位は「オーム(Ω)」です。
抵抗も電流と同じく、1000毎に単位が変わります。例えば1,000Ωは1kΩ(キロオーム)と同義です。また1,000kΩは1MΩ(メガオーム)に換算できます。

1,000,000Ω = 1,000kΩ = 1MΩ

(MΩの次はGΩ…と続きますが、電子工作でよく使うMΩくらいまで知ってればとりあえずOKです)

抵抗器の値の読み方


抵抗を回路にもたらす電子部品が「抵抗器」です。
一般的に、「回路に抵抗を挿す」という表現の「抵抗」は、この「抵抗器」を指します。

抵抗器にはいろいろな形状のものがありますが、本資料では右図のような、“リード線形抵抗器”について解説します。
(リード線形抵抗器を以下抵抗と呼びます)
 
本項冒頭でも触れた通り、抵抗は物により威力が違います。
個々の抵抗が持つ抵抗値は予め決まっており、不変です。
手元にある抵抗がどの程度の抵抗値を持っているかは、抵抗表面に印刷されているカラフルな色の帯、「カラーコード」で判別します。
 
一般的な抵抗のカラーコード対応表は以下のサイトを参考にしてください。
但し、メーカーや製品によっては独自ルールを採っている場合があるので、実際に使う抵抗のメーカーが出している資料を都度参照してください。

抵抗器のカラーコード・表示の読み方、覚え方(株式会社赤羽電具製作所):https://www.akaneohm.com/column/marking/

カラーコードの読み方例


上の写真は、カラーコード5本印刷タイプの抵抗です。左から順に黄/紫/黒/金/茶の帯が印刷されています。
コード表から導き出される数値は、左から順に4/7/0/0.1/±1%となります。
3番目までの数字を並べたベースの数値470に4番目の乗数0.1をかけると、47Ωと導き出せます。5番目の±1%は抵抗の許容差を表します。

オームの法則


抵抗の読み方がわかったので、今度は実際に回路に組み込む抵抗を選定してみましょう!
この項冒頭に出てきた、LEDを点灯させる回路を例にして、必要な抵抗値の計算をします。
  
抵抗値の計算に必要なのが、「オームの法則」です。
オームの法則の公式は、 電圧(V) = 電流(A) * 抵抗(R) です。
  

オームの法則は上の図のように表すこともできます。

電圧(V)、電流(A)、抵抗(R)の書かれた円の外に、円の上から下に向かって「÷」円の一番下には左右を繋ぐ「×」があります。
この記号の通り、下の電流(A)と抵抗(R)を掛け算すると、円の残りである電圧(V)が求められます。
また電圧(V)÷抵抗(R)をすると残りの電流(A)を、電圧(V)÷電流(A)をすると残りの抵抗(R)を求めることができます。
  
例えば、5Vの電源に、100Ωの抵抗を接続した場合、回路を流れる電流は以下の式で求められます。
  5(V) / 100(Ω) = 0.05(A)
ちなみに 1A = 1000mA なので、0.05A は50mAと読み替えことができます。
  



先程の、LEDを光らせる回路に戻ります!

オームの法則を使ってLEDに適切な抵抗(R)の値を計算するには、前提となる電圧(V)と電流(A)の値が必要です。
今回この回路の仕様は、下記の通りとします。
 電源:5Vのモバイルバッテリー
 LED:順電圧(Vf):3.5V / 順電流(If):15mA
  
またしても新しい単語が出現しました。LEDの「順電圧(Vf)」と「順電流(If)」について説明します!

順電圧(Vf)

LEDは+極から-極の順方向に向かって電気を流さないと光りません(逆方向だと最悪壊れます)
また順方向であっても、一定以上の値の電圧をかけなければ電流が流れず、これも光りません。
“そのLEDを光らせることができる順方向の電圧の値”を、順電圧といいます。
(パーツのデータシートには「Vf」と書き表されていることが多いです)
順電圧の値はLEDの個体毎に異なるので、使いたいLEDはデータシートで都度確認が必要です。
ちなみにLEDの色でざっくり傾向があり、例えば赤色や黄色LEDのVfは一般的に2V前後、白色や青色LEDのVfは3.5Vくらいのものが多いです。

順電流(If)

LEDは流す電流が多ければ多いほど明るく光りますが、許容量を超えると壊れてしまいます。
また最悪発熱・発火することもあるので、適切な量の電流を流してやる必要があります。
“LEDを安全に光らせることができる順方向の電流の推奨値”を、順電流といいます。
(パーツのデータシートには「If」と書き表されていることが多いです)
  

参考:ちゃんとしたお店のしっかりしたLEDなら、だいたいデータシートがついてるよ
  


「電源が5VでLEDにかける電流が15mAなら、 5(V) / 0.015(A) = 333.33333…(Ω)でよくね?」
 と思うかもしれないじゃないですか? (講師は若干そう思いかけましたよ…(震え声))
 でも残念ながらこれではダメなんですね。
  

電圧の特性をもう一度思い出しましょう!
回路に直列に素子を繋いだ場合、各素子にかかる電圧の総合計が電源電圧と等しくなります。
  

今回の回路では、電源の電圧は5Vです。
またLEDの順電圧は3.5Vなので、LEDには3.5Vの電圧をかける必要があります(3.5V未満だと光りません…)
抵抗とLEDはこの回路上では直列に繋がれている関係です。
なので、5V - 3.5V = 1.5V となり、この抵抗には1.5Vの電圧がかかることがわかります。
  
今回求めるのはこの抵抗器の抵抗(R)なので、電圧(V)には抵抗器の電圧1.5Vを入れる必要があります。
そんなわけで、抵抗(R)を求める最終的な計算式はこちらです。
  
V【5V(電源電圧) - 3.5V(LEDのVf) = 1.5V(抵抗器の電圧)】
―――――――――――――――――――――――――――― = R【100Ω(抵抗器の抵抗)】
        A【0.015A(LEDのIf)】
  
今回この回路では100Ωの抵抗を採用すればLEDに適切な電流を流せることがわかりました!
もし計算結果と全く同じ大きさの抵抗が存在しなかった場合は、“最も近い値の少し大きめの抵抗”を採用するのが基本となります。

例:計算結果が85Ω → 100Ωを採用する
  計算結果が450Ω → 470Ωを採用する
  

抵抗値計算に便利なページもあるよ!

秋月電子通商の抵抗値計算ページが便利です。
https://akizukidenshi.com/catalog/pages/led-r-calc.aspx